塩化パラトルエンスルホニル(えんかパラトルエンスルホニル、p-toluenesulfonyl chloride)は、有機合成化学で用いられる試薬のひとつ。ヒドロキシ基をスルホニル化してパラトルエンスルホニル基(トシル基)に変え、反応性を高めるために用いられる。パラトルエンスルホニル基を慣用名としてトシル基と呼び Ts と略することから、塩化パラトルエンスルホニルは別名として塩化トシル (tosyl chloride) とも呼ばれ、TsCl と略記される。

合成と性質

トルエンにクロロスルホン酸を反応させて合成する。

CH 3 C 6 H 5 ClSO 3 H p CH 3 C 6 H 4 SO 2 Cl H 2 O {\displaystyle {\ce {CH3C6H5 ClSO3H -> p-CH3C6H4SO2Cl H2O}}}

無色の固体で、刺激臭を有する。水とは反応して、徐々にパラトルエンスルホン酸と塩化水素とに分解する。塩基性の水中では、加水分解が速まる。

用途

塩化パラトルエンスルホニルは塩基の存在下にアルコールなどのヒドロキシ基をスルホニル化する。塩基としてはピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン (DMAP)、水酸化ナトリウムなどが用いられ、概ね収率は良好である。

ROH TsCl C5H5N → ROTs C5H5N•HCl (Ts = CH3C6H6SO2-)

この反応生成物であるトシル化合物(パラトルエンスルホン酸エステル)は、スルホナートアニオンが良い脱離基であることから、求核置換反応や脱離反応への活性が高い。2種類の異なるアルコールから非対称エーテルを合成する際に、この方法によるトシル化に続いてウィリアムソン合成を行なう。

ROTs R'OH Base → ROR' Base•TsOH

アミノ基をトシル化する際にも用いられる。

RNH2 TsCl Base → RNH-Ts Base•HCl

製造

TsClは、トルエンのクロロスルホン化による塩化オルトトルエンスルホニル(サッカリン合成の前駆体)生産の副生成物として得られるため、研究用途に安価に入手可能である。

CH 3 C 6 H 5 SO 2 Cl 2 CH 3 C 6 H 4 SO 2 Cl HCl {\displaystyle {\ce {CH3C6H5 SO2Cl2 -> CH3C6H4SO2Cl HCl}}}

脚注


pトルエンスルホニルカルバマートによるアルコールの保護 ネットdeカガク

pトルエンスルホン酸メチルIndia Fine Chemicals

技術紹介 研究開発 塩素化のイハラニッケイ化学工業

事業紹介|パラトルエンスルホン酸(PTSA)の明友産業株式会社

Images of ベンゼンスルホニルクロリド JapaneseClass.jp